- 思考環境 / Context って何?
対話型プロンプトの要素「思考環境 / Context」とは、AIがその対話を「どんなモードの対話」として理解するかを決めるものです。
もし、人間同士なら、言葉にしなくても、相手との関係性やその場の空気から、
「今はじっくり話を聞く場なんだな」
「今は一緒に考えを整理する場なんだな」
「今はすぐ答えを出す場なんだな」
と、なんとなく判断できるでしょう。
たとえば、仲の良い友だちに話しかけられたとして、
授業終わりに笑顔で話しかけてきたなら、
「ただ楽しく話したいんだな」
目に涙を浮かべていたなら、
「今はちゃんと話を聞いた方がいいな」
と、なんとなく雰囲気を感じ取るでしょう。
でも、AIは、その対話の空気感やユーザーとの関係性を、最初から人間と同じように読み取れるわけではありません。
だからこそ、このチャットをどんなモードの対話として進めるのかを、最初に言葉で伝えておく必要があります。
たとえば、
「このチャットは、ユーザーがAIに話を聞いてもらう場です。
AIは、すぐに結論や解決策を出すのではなく、ユーザーの気持ちや言葉を受け止め、安心して話せるように応答します。」
「このチャットは、ユーザーがAIと対話しながら、自分の考えを整理していく場です。
AIは、ユーザーの発言を整理し、ユーザー自身が気づけるように支援します。」
「このチャットは、ユーザーがAIに今ある情報からすぐ答えや案を出してもらう場です。
AIは、追加のやり取りを最小限にし、条件に合う答えや案をすばやく提示します。」
このように、思考環境 / Contextとは、
AIの答えそのものを決めるというより、
AIがどう考え、どう対話を進めるかを決めるための前提なのです。
って、分かります??
目的とか、役割とか、条件って、日本語のイメージから、なんとなく分かるじゃないですか?
でも、思考環境 / Context?何それ?
目的とか条件と何が違うの?
てことで、もぉちょい掘り下げてみてみましょう笑
Contextのもともとの意味(英語としてのContext)
Contextを日本語に訳すと、「やばい」です。
あ、違った!
しかも、全然違いました笑
でも、実は少しだけ共通点もあるんです。
それは、
「前後の流れや場面によって、意味が変わる」
という点です。
たとえば「やばい」って、いろんな意味で使いますよね。
• え、やばい、最悪…
• え、やばい、最高!
• やばい、かわいすぎる
• やばい、間に合わん
全部「やばい」なのに、
前後の流れによって意味がぜんぜん違います。
「最悪」という意味にもなるし、
「最高」という意味にもなるし、
「焦っている」という意味にもなる。
つまり、言葉そのものだけではなく、
その言葉が使われている場面や流れによって、
意味が決まっているわけです。
Contextも、これに少し似ています。
Contextは、単語ひとつだけで意味を決めるものではありません。
その言葉や出来事のまわりにある、
状況、背景、場面、前後の流れによって、
意味の受け取り方が変わります。
対話型プロンプトでは、Contextを「思考環境」と訳していますが、これは私の造語です。
最初、チャッピーにいくら聞いてもContextの意味が分からなくて、
じゃあ日本語としては「思考の環境」でいいや!
って決まりました笑
では、ここからはContextを、
全く新しい言葉として見ていきましょう。
Contextは、AI界隈だけの言葉ではありません。
英語では昔から使われてきた言葉で、
ざっくり言うと、
「ある物事の意味を理解するための、まわりの状況や背景」
のような意味があります。
英英辞典風に見ると、Contextはこんな感じです。
Context
the situation, background, or circumstances that surround something and help explain its meaning
→ ある物事のまわりにある状況・背景・条件で、その意味を理解する手がかりになるもの
Contextには、いくつかの仲間があります。
situation(状況)
→ 今どういう状態か
background(背景)
→ そこに至るまでの経緯
setting(場)
→ どんな場所や環境か
circumstances(事情)
→ 判断に影響する条件
こうやって分けて考えると分かるんですが、
Contextって、
これらを全部まとめたものなんです。
だから、
「状況」だけでもないし、
「背景」だけでもないし、
「場」だけでもない。
それらを全部含めた、
「意味を決めるための前提」
なんですね。
で、ここまで来ると、
ちょっとずつ見えてきません?笑
思考環境 / Context は対話の深さと結論の速さを決める
ここでは、思考環境 / Context を、
「対話」と「結論」のバランスで5つに分けて考えてみます。
対話を重視する場なのか。
結論を重視する場なのか。
この違いによって、AIに求める返し方は大きく変わります。
たとえば、相手の話をじっくり聞くことを大事にする場もあれば、
話しながら考えを整理する場もあります。
また、相談しながら方向性を決める場もあれば、
必要な情報だけ確認して判断する場もあります。
さらに、対話を重ねずに、今ある情報からすぐ答えを出す場もあります。
この記事では、この違いを次の5つに分けて考えます。
・傾聴の場
・整理の場
・相談の場
・判断の場
・即答の場
この5つは、完全に別々のものというより、
「対話を重視する場」から
「結論を重視する場」へ向かうグラデーションです。
傾聴の場は、対話10:結論0。
整理の場は、対話8:結論2。
相談の場は、対話5:結論5。
判断の場は、対話2:結論8。
即答の場は、対話0:結論10。
このように考えると、
思考環境 / Context は、
単に「どんな話題を扱うか」だけではなく、
その対話をどれくらい深く進めるか、
どれくらい早く結論へ向かうかも決めていることが分かります。
思考環境 / Context の段階的分類
傾聴の場(対話10:結論0)
– イメージ
– 時間を気にせずに、相手の話をじっくり聞く場
– 大事にすること
– 気持ちの交換
– 共感
– 目的ではないこと
– 結論を出すこと
– 方向性を決めること
– 具体例
– 心理カウンセラーに、ゆっくり悩みを聞いてもらう
– 次の日が休みの夜に、女子高生の親友同士が、用事もないのにずっと電話している
整理の場(対話8:結論2)
– イメージ
– 対話を通して、考え方や方向性をゆっくり整理する場
– 大事にすること
– 話しながら考えること
– 自分の考えに気づくこと
– 目的ではないこと
– すぐに結論を出すこと
– 強く判断すること
– 具体例
– キャリアカウンセラーに、転職したい気持ちと不安を話しながら、本当に変えたいものは何かを整理してもらう
– まだまとまっていない原稿のアイデアを、編集者に話しながら、テーマや切り口を整理してもらう
相談の場(対話5:結論5)
– イメージ
– 限られた時間の中で、相談しながら方向性を決める場
– 大事にすること
– 状況も整理すること
– 現実的な方向性を出すこと
– 目的ではないこと
– 気持ちを聞くだけで終わること
– 一方的に決めつけること
– 具体例
– ファイナンシャルプランナーに、家計の状況を見てもらいながら、無理のない見直し方を一緒に考える
– 友だちと旅行の行き先について、希望・予算・日程を出し合いながら、現実的に行けそうな場所を相談する
判断の場(対話2:結論8)
– イメージ
– 要点だけを整理して、すばやく結論を出す場
– 大事にすること
– 必要な情報だけ確認すること
– 判断すること
– 目的ではないこと
– 気持ちを深く掘り下げること
– 背景を長く聞くこと
– 具体例
– 午後からの会議で使う説明資料を、これまで一緒に相談しながら見てくれていた上司に確認してもらい、内容に大きな問題がないか判断してもらう
– スマホの買い替え候補を、詳しい友だちに見てもらい、自分の使い方に合っているか判断してもらう
即答の場(対話0:結論10)
– イメージ
– 理由や背景より、すぐ結論がほしい場
– 大事にすること
– 答え
– すぐ返すこと
– 目的ではないこと
– 気持ちの交換
– 考えをゆっくり整理すること
– 具体例
– 新しい企画を立ち上げるため、上司が部下に「条件に合う使えそうな案を5つ出して」と指示する
– 生徒が先生に、分からないところをその場ですぐ教えてもらう
人間には分かるのにAIには伝わらない理由
ここまで、思考環境 / Context を、
人間同士の場面に置き換えて見てきました。
心理カウンセラーに、ゆっくり悩みを聞いてもらう場。
女子高生の親友同士が、次の日が休みの夜に、
用事もないのにずっと電話している場。
キャリアカウンセラーに、
転職したい気持ちと不安を話しながら、
本当に変えたいものは何かを整理してもらう場。
ファイナンシャルプランナーに、
家計の状況を見てもらいながら、
無理のない見直し方を一緒に考える場。
先生に、分からないところをその場ですぐ教えてもらう場。
こういう例だと、
なんとなく「場の違い」が分かりやすいですよね。
でも、ここで一つ気づきませんか?
冒頭で出した思考環境 / Context の例とは、
少しニュアンスが違いますよね。
冒頭の例は、
「このチャットは、ユーザーがAIに話を聞いてもらう場です。
AIは、すぐに結論や解決策を出すのではなく、ユーザーの気持ちや言葉を受け止め、安心して話せるように応答します。」
「このチャットは、ユーザーがAIと対話しながら、自分の考えを整理していく場です。
AIは、ユーザーの発言を整理し、ユーザー自身が気づけるように支援します。」
「このチャットは、ユーザーがAIに今ある情報からすぐ答えや案を出してもらう場です。
AIは、追加のやり取りを最小限にし、条件に合う答えや案をすばやく提示します。」
というように、
AIに伝えるための文章でした。
一方で、ここまで見てきた具体例は、
「カウンセラーに、ゆっくり悩みを聞いてもらう」
「女子高生の親友同士が、用事もないのにずっと電話している」
「生徒が先生に、分からないところをその場ですぐ教えてもらう」
というように、
人間がイメージしやすい場面でした。
つまり、同じ Context でも、
人間が理解しやすい Context の例と、
AIに伝えるための Context の書き方は、
少し形が違うのです。
人間は、場面を聞けば、
かなり多くの前提を勝手に補えます。
「カウンセラーに悩みを聞いてもらう」
と聞けば、
ああ、これはすぐ結論を出す場ではなくて、
気持ちを受け止めてもらう場なんだな、
と分かります。
「先生に分からないところをその場ですぐ教えてもらう」
と聞けば、
ああ、これはじっくり気持ちを聞く場ではなくて、
すぐ答えや説明がほしい場なんだな、
と分かります。
人間は、相手との関係性や場面の空気から、
そうした前提を自然に読み取っています。
でも、AIにはその空気が、
最初から共有されているわけではありません。
だからAIに伝えるときは、
「この対話は、結論を急がず、相手の話をじっくり聞く場です」
「この対話は、話しながら考えを整理し、自分の考えに気づいていく場です」
「この対話は、今ある情報からすぐ答えや案を出す場です」
というように、
その場の意味を言葉で説明してあげる必要があります。
人間ならなんとなく分かることでも、
AIには、言葉にしないと伝わりにくい。
だからこそ、対話型プロンプトでは、
最初に思考環境 / Context を書いておく意味があるのです。
まとめ:Contextとは何か
Contextとは、意味を決めるための前提です。
対話型プロンプトにおける思考環境 / Context は、
AIにこの対話を「どんな場として始めるか」を伝えるものです。
人間同士なら、相手との関係性や場の空気から、
かなり多くの前提を自然に読み取れます。
でもAIには、その空気が最初から共有されているわけではありません。
だからこそ、
「この対話は、結論を急がず、相手の話をじっくり聞く場です」
「この対話は、話しながら考えを整理する場です」
「この対話は、今ある情報からすぐ答えや案を出す場です」
のように、最初に思考環境 / Context を言葉で伝えておく必要があります。
AIに何を答えさせるかの前に、
AIとどんな場で考えるかをそろえる。
それが、思考環境 / Context の役割です。
